2012年2月22日水曜日

Stay Foolish!

波頭亮・茂木健一郎著『突き抜ける人材』(PHPビジネス新書208)を読む。

既得権益のピラミッドがガチガチに社会を縛り付け、もはや自らは次世代への変化を生み出せない状況の日本。1995年以降、世界で変化していないのは日本だけという言葉も出てくる。危機感に満ちた本である。それを打破するのは、若い世代しかない。「突き抜けた人材」しかないという内容の本だ。

内容は至極当然というか、分かる内容だが、じゃ突き抜けた人材を育成するにはどうするのか、何がができるのか。最後の方で私塾の可能性に触れている。吉田松陰の松下村塾のような既存のシステムにとらわれずに、次世代をになう人材を輩出する道筋に希望を見出すという。

素朴な思いだが、常識にとらわれない若い人材が世にでて何かを始めても、権力や権威を持った既存の権益ピラミッドに押しつぶされるのがオチだ。

日本は明治維新や、敗戦などこれまで大きな変革を経験してきているが、いずれも大きな環境変化や、強い外圧に(しぶしぶ)対応する形で自らを変化させたように思う。自らの内部の矛盾を動機として、次の時代に向けて「自ら」変化した経験はあまりないと感じる。

既存のシステムが疲弊して機能しなくなり、極限まで危機感が高まるなど、環境条件が整わないと、若い人材が大きな役割をになうことはありえない。日本の状況がトコトンダメになるか、国民から一揆のような反乱がおきない限り、既存の権益システムはこれまでどおり機能して変化を押しつぶす方向に動くだろう。リビアのカダフィ大佐の末期のような足掻きや騒乱は必ず起こると想定しなければならない。

日本のこれまでの非常識が、新時代の常識に変わり、それが当然だと感じるようになることが、まず必要だと感じる。自己保身、組織保身に明け暮れる役人の支配に晒されていてはダメなんだとか、何の利益を生まないことに税金をつぎ込むべきではないし、それは犯罪なんだとかいうことが、当たり前になることだ。また科学技術の分野で、いちばんになることがなければ、日本国の成長の原資はなく、他国の後塵を拝するだけなんだ、ということである。国家の科学技術の予算に関して、なぜ一番でなきゃいけないんですかと、技術オンチのヘンな人に公開の場で言われること自体が、とっても恥ずかしいことだ、と感じなければダメだ。

スティーブ・ジョブスの有名となった演説に、Stay Foolish!という言葉がある。
日本の語感は、バカになれという風にしか聞こえない。
英語圏での語感は分からないところがあるが、たぶんバカというよりキチガイ、日本で言う「オタク」に近いものではないかと思う。
日本が大切にしてきた人材、すなわち「優等生」の対極に位置する人種だ。
若者よ、オタクであれ!平凡な優等生を目指すな!という意味だろうか。



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